bajo la luz de la luna
『心配しなくても、アンタを避けたりしないわよ。これまでも、これからも、アンタはアタシの秘書でしょう?ガルシア。』



 彼の視線が、ゆっくりと戻ってくる。その瞳からは様々な感情が読み取れた。アタシの体調を心配しているものや、群とのちょっとした言い争いで少しスッキリしたというもの。それから、アタシの言葉に対する返事だ。



『……そうですね。ありがとうございます、お嬢様。』



 ――微かだけど、ガルシアが笑った。その肩に群が手を置き、『な、雰囲気が柔らかいだろ?』とアタシに目配せする。途端にガルシアが不機嫌な顔になったので、群と一緒に吹き出してしまった。

 いつも憎まれ口ばかり叩いている我が秘書だけど、少しばかり見方が変わった。この人は、感情表現が下手なだけなのだ。ついでに言うと、表情も乏しい。だけどそれは、こちらが汲んでやれば済むことだ。そう思った。



『未来、お前はもう寝ろ。』

『そうですよ、お嬢様。お腹が空いていらっしゃるなら、何か持ってこさせますし。』



 二人が優しい言葉をかけてくれる。だけどアタシにはまだ、解決しなければならない問題が残っているのだ。
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