bajo la luz de la luna
 人影のお陰で、アタシはフランシスコの攻撃を免れた。普通なら、助かったと安堵しているだろう。そう、これが“アタシが普通でいられる状況”だったなら。

 敵も味方も唖然としているのだから、やはりこれは予想外で予定外の状況なのだ。頭の中で様々な思いが交錯しながらも、何処か客観的にそう考えている自分が居た。



『どうしてあなたがここにいらっしゃるんですか!お嬢様は一切連絡をなさらなかったと……』



 狼狽したガルシアの声がした。いつも飄々としている彼が取り乱すのを見るのは、これで二回目。ソニアとグレイは、物も言えずに目を見開いているだけだ。



『……何処で情報を掴んだんだ?噂通り神出鬼没だな。流石は“ファルコン”だ。できればお前の無様な姿は見たくなかったんだが。』

『そりゃ悪かったな……あれこれ考えてる余裕がなかったんだよ……』



 聞き慣れたコントラバスのようなトーン。それを耳にしたら、今ここで起きていることが幻などではないのだと思い知らされる。

 こちらへ振り向いたその人の胸元、黒いスーツの一部が色濃く染まっている。チラリと覗いた白いシャツが赤く色付いて、コントラストを奏でていた。
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