bajo la luz de la luna
 緊迫した空気の中、『始めるぞ』というグレイの声。やけに大きく聞こえた気がするのは、辺り一帯から物音一つしないからだ。

 まさに決戦という状況。アタシと背後の相手の間に、決闘前の独特の淀んだ時が流れる。



「……Uno.(1。)」



 一歩目。砂が、ジャリッと音を立てる。



「Dos.(2。)」



 二歩目。風が、そっと頬を撫でる。次で勝負の決着だ。



「……Tres!(3!)」



 三歩目を踏み出した瞬間、振り返って撃った。二つの発砲音が聞こえた直後。それとは別の発砲音が二回して、アタシ達の間に大きな灰色の影が割り入った。

 その人影はどうやら、アタシ達の弾丸それぞれを自らの銃で撃ち落としたらしい。恐ろしい程の動体視力と判断力に、敬服の念を抱(いだ)かずには居られない。



『貴様、何の用だ!?部外者は引っ込んでろ!!』

『部外者、か……生憎私は“関係者”なのだよ、フランシスコ・ベラノ。面会が遅れたな。』



 2メートル近くある長身の男。この人を、アタシはよく知っている。だって、生まれた時からずっと、その背中を見てきたのだから。彼はその漆黒の瞳を向け、威圧感のある声でアタシの名前を呼んだ。
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