bajo la luz de la luna
『……私は、もう長くないらしい。フリアンの仇を討った時、相手の弾に当たってしまってな。命に別状はないと思っていたんだが、今更影響が出てきた。あと何年生きられるか分からないのだよ。』

『そんな!聞いてないわ!!』

『あぁ、言っていないからな。皐にも口止めしていた。最近旅行だと言って出かけたのは、良い医者を探していたんだ。幸い、少しは延命できそうだから、お前の晴れ姿くらいは見られるだろう。』



 穏やかに笑いながら、頭を撫でてくる父。だけど、アタシは笑ってなんか居られない。別れを前もって告げられて、誰が落ち着いていられるだろうか。

 ――でも、一つ気付いたことがある。群に目を向けたら『お前も気付いたか?』と言われ、小さく頷いた。



『……だからあの時、群に“生きろ”と言ったのね。パパもママも居なくなったら、アタシが一人になってしまうから。』

『フェルナンドさん、すみませんでした。俺、あの時は知らなくて。さっきまで死にかけてましたしね……』



 父はアタシから手を離し、苦笑する群の側にしゃがみ込んだ。そして、横たわっている彼の頭に手を置いて微笑する。



『……群、未来を頼んだぞ。』
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