bajo la luz de la luna
 この男は、どうやら節度というものを知らないらしい。隣ではルイ君が顔を真っ赤にしており、周りの大人達のニヤニヤした視線が突き刺さってくる。本当に、群は群らしいとしか言いようがない。



『……アナタ、どうやら今すぐ撃たれたいようね。』

『怖いこと言うなよ。祝いの席だぞ?』

『主催はウチよ。アタシが良いと言ったら良いの。』

『おいおい、ちょっとからかってみただけなんだから許せよ。』



 漆黒の髪を心地良く撫でてくる手に、結局は良いように丸め込まれてしまった。溜め息をついた時、『そういえば』という声。見ると、白スーツの男がアタシ達に目を向けていた。



『お前達、婚約しているんだったな。式はいつだ?』

『まだ未定だ。こいつがボスに慣れるまではやめとこうと思ってな。』



 答えた群に『そうか』と返したフランシスコ。その視線が、アタシのものとぶつかる。



『バラは好きか?』

『ええ、好きよ。ファミリーネームだもの。』

『なら、式には装飾用にでもブルガリア・ローズを送ってやる。早く両親に晴れ姿を見せてやれよ。』



 薄く微笑む黒の瞳。ソニアやグレイの歓喜の声が、アタシの鼓膜を揺らした。
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