bajo la luz de la luna
 微笑した二つの唇が近付こうとした時に突如鳴り響く、気が利かない電子音。それは、アタシの服のポケットから聞こえてくる。



「出ろよ。呼ばれてるぞ。」

「……ごめんなさい。こんな時にかけてくるのは、多分あの小舅秘書ね。」



 言いながらサブディスプレイを確認すると、予感的中。アタシもタイミングが悪いけどコイツも負けていないなと思い、電話に出た。



『どうしたの。』

『お楽しみの所申し訳ありませんが、中国の虎爪会と何処かのファミリーが、アンダルシア辺りで銃撃戦をしているそうです。虎爪会はかなり気性が荒いので、群様にも手伝って頂いた方がよろしいかと。』



 溜め息をついて隣の人に問おうとした時、手から携帯がスッと抜き取られる。見ると、群が「聞こえてる。トラブルがあったんだろ」と苦笑していた。流石は耳の良い恋人だ。



『ガルシア、すぐ行くから待ってろよ。』



 手短に答えて電話を切り、アタシに返す群。まったく、とんでもない邪魔が入ったものだ。



「……行くか。」

「ええ。」



 駆け出した群を追い、一歩踏み出す。月光下、アタシ達の仕事が密やかに始まった。



fin.
→後書き
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