bajo la luz de la luna
「記憶上のあいつの声と比べると、あんたの方が少し高ぇんだよな。
それから、あんたは職人の手をしてる。車でも直してるのか?随分と使い込んだ手をしてるけど。」



 群は恐ろしく耳が良く、音に関しては特に注意深い。マフィアでなかったなら音楽家になって稼いでいるのだろう。観察力も探偵顔負けだと、本職の探偵に言われたことがあるらしい。エリオさんはその両方に驚いたようで、感嘆の吐息を洩らした。



「……貴方は本当に鋭い観察力と洞察力をお持ちですね、ドン・チェーロ。噂は耳にしておりましたが、改めて尊敬しました。
僕は幼い頃からボスを継ぐ者として育てられてきた兄とは違い、本当に一般の子供と同様の教育しか受けていないんです。唯一違うのは、クレオの医療班として働く勉強をしていたことでしょうか……兄達が負傷した時に治療出来るように。」



 その勉強は結局役には立たなかったんですがね、と彼は苦笑する。エリオさんは困った人を助ける仕事がしたかったのだけど、マフィアの医療チームというのはどうしても気が進まなかったらしい。そこで、機械などをいじるのが好きだった彼は、町の片隅に小さな修理屋を開いたのだという。
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