bajo la luz de la luna
 八年振りに会った兄は、随分と変わっていた。表情は豊かなままだったが、人使いが荒く乱暴になっていた。利己的な人間になり下がってしまったのだと、彼は悟ったそうだ。



「昔世話になった召し使い達や彼の部下には、相当愚痴を聞かされましたよ。どれも酷いんです。ある部下を皆の前で殴り殺したとも聞きました。彼のやり方は、マフィアには無関心で知識が乏しい僕でも腹が立ちました。」



 だから、彼が召されて反って良かったとも思ってるんですよ、とエリオさん。確かにそうかも知れない。でも、エリオさんはどうなのだろう。彼が死んだことをカモフラージュするために無理矢理呼び戻されているのに……そう思ったアタシに感付いたのか、エリオさんは小さく笑った。



「心配ありませんよ、ドン・ローサ。僕はもうすぐ、ただの修理屋さんに戻ります。決まったんですよ、兄の後継者が。先日初めて会ったんですが、僕の弟だそうです。
彼はまだ11歳なのに……僕はどうしても納得出来ません。そうなるくらいなら、僕が影武者を続けた方がマシです。」



 そう言った彼を見て思った。あぁ、この人はやっぱり、光(そと)の世界の人間なんだ……と。
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