bajo la luz de la luna
「……エリオさん。やっぱりアナタ、“この世界”を何も分かっちゃいないのね。」

「え?」



 驚いた顔をした彼に構わず、アタシは続けることにした。隣では群が眉をひそめていたけれど、それにもあえて反応しなかった。



「何歳だろうが関係ないのよ。血を受け継ぎ、誇りと素質を持った者が後継者になるの。“代わってやる”だなんて馬鹿げたことは無理よ。
……アナタは優しすぎるわ。だから、絶対マフィアに向いてない。」



 群も、少しは日本語を理解しているらしい部下達も、アタシの断言を否定しない。つまり、それは“正しい”ということだ。



「未来の言う通りだぜ、エリオさん。現にローサから史上最年少の8歳で指揮を取ったボスが出てる。確か10代目だったな。顔は見たことねぇけど、俺の先祖にも12歳からボスをやってた奴が居るらしいぜ。」



 群はチェーロの25代目で、彼の遠い祖先はイタリア人だ。中学を卒業するまで、群はチェーロの人間がたしなむというフェンシングを幼い頃から続けていたらしい。その功績が関係者達の目に留まり、スカウトがきた。「突然イタリアに連れていかれた時はビビった」と、群がいつか言っていた。
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