bajo la luz de la luna
 まるでここには二人の人間しか居ないというように、群の視線はしっかりとアタシを捉えている。周りの女性達から見れば、羨ましいくらいの熱視線なのだろう。

 邪魔だ、と言ってやりたい。だけどあと一秒だけ、この目をその棕櫚の目と交わらせていたい。



「……アナタがアタシを好きなのは十分に分かったわ。だから、その無駄に熱い視線を早く引き剥がしてちょうだい。」

「嬉しいクセに、よく言うよ。」



 群は心地良さそうに、喉を鳴らして笑う。そして、アタシの頬から手を離すと、再びエリオさんに焦点を当てた。



「そういうことだ。俺達があんたの弟を支えてやるよ。マフィアの絆ってのは強力だからな。」



 格好をつけたかったのかどうかは知らないけど、群はそんなことを言って、胸元の煙草のケースに伸ばしかけた手をスッと止める。チラリ、アタシを見た。彼の言いたいことがひしひしと伝わってくる。



「……遠慮してくれるのね?」

「未来、煙草嫌いだったろ?忘れるとこだったぜ。」



 すまねぇな、と苦笑し、群は「そろそろスペイン語に切り替えた方が良くねぇか?」と呟く。気付けば部下達が欠伸を噛み殺していた。
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