bajo la luz de la luna
『みんな、ごめん。半分くらい訳が分からなかったでしょう?小声だったし、周りにも聞かれていないと思うんだけど……』

『ここらに日本語が理解出来る人間はそう居ませんよ、お嬢様。わたくし達のために、かいつまんで翻訳した上で話して頂けると有難いです。』



 ガルシアの依頼にソニアが『ガルシア、秘書が上司に頼み事をしちゃいけないのよ。本当に秘書検受けたの?』と訝しむ。『勿論です。当たり前のことを聞かないで下さい』と生意気に返した彼の言葉に、アタシは目立たないながらも首を捻った。

 彼は細かいことにやたらとこだわり、仕事は期限内に必ず終えて提出する。仕事が出来る優秀な秘書がこんなことを言うなんて珍しい。そんなに興味深い内容だったのだろうか。



『……日本の古語で言う“ゆかし”ね。』

『ユカシ?何です、それは。』



 ガルシアをはじめとした非日本語話者の四人は疑義を抱いたらしいが、日本語話者の群だけが分かってくれた。『“見たい、聞きたい、知りたい”だろ。ガルシア、そんなに未来が気になるか?』とクスリ、快弁なスペイン語で言う。ガルシアは『上司のことを把握しておきたいだけですが』と飄々としている。あぁ、謎だ。
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