bajo la luz de la luna
 群はくるりと振り向いて、その吸い込まれそうな瞳でアタシを見てくる。この目に見つめられたら失神したという一般女性が居たらしい。分からなくもないけど、そこまでとは驚いてしまう。生憎、“目殺”はされるよりしなければならない職業に就いているので。本気になった時の群の目力がマフィア界でナンバーワンの強さを誇るということは、認めてやるけれども。



「……お前、目立つの嫌いだろ?お前の親父さんから『未来は現金しか持ち歩かないんだ。珍しいだろう』って聞かされてから、ずっと思ってたんだよな。」

「心を読んだ訳ではなかったのね。素晴らしい推理力だこと。」

「馬鹿、いつでも読心術使う奴が何処に居るんだよ。」



 近付いてきてアタシの頭にコツンと拳を当てた群は、その手でアタシの右手を掴んだ。紳士的なのかタラシ的なのかは判断し兼ねる。

 ソニアが『やだ!神小柴さん素敵ー!!』と叫べば、グレイは『おっ!ボスは群さんと屋敷までドライブか』とニヤリ。ガルシアは無言で溜め息をつき、車内で待機していた残りの部下達はどよめきや感嘆の声を上げていた。

 ――強引な婚約者だこと。そう思ったら、何故だか口元が緩まってしまった。
< 40 / 268 >

この作品をシェア

pagetop