bajo la luz de la luna
 普通マフィアのボス、特に男性は数人の愛人を持っているものだ。過去において有名なのは、約十年前に消えてしまったソルファミリー――アタシのパパが潰したと言われている、スペインに拠点を置いていたファミリーだ。

 そのファミリーの最後のボスとされるフリアン・ベラノという男が、噂では100余人の愛人を持っていたらしい。しかも彼女達に対する扱いがあまりにも酷すぎたのか、“女性の敵”だと非難されていたのを覚えている。



「お前、俺をあのソルファミリーのラスボスと一緒にする気か?」

「まさか。今はそう思っていないわよ。誤解していたこと、謝るわ。」

「……まぁ、良いけどよ。初めてお前と話した時、俺の周りをフラメンコダンサー共がうろちょろしてたからな。誤解されても仕方ねぇよ。」



 気にしていない風に言った群は、アタシの左側でクスクスと笑う。彼の愛車の一つであるこのスポーツカーは、相変わらず傷のないウルトラマリンの艶(つや)やかなボディーを保っている。車には疎いから、フェラーリだかフィアットだか忘れてしまったけれど。

 群は「そんなことより、最近何か起こらなかったか?」と尋ねてきた。思わず、首を傾げる。
< 44 / 268 >

この作品をシェア

pagetop