bajo la luz de la luna
 世界遺産のローマ水道橋があるセゴビアの街を、ウルトラマリンの車が優雅に走る。歴史的建造物が多いこの街に、アタシ達ローサファミリーは拠点を置いているのだ。

 首都マドリッドから少し離れた所にあるこの街には、白雪姫の城のモデルになった崖の上にそびえる青屋根のアルカサルや、「大聖堂の貴婦人」と呼ばれるゴシック式のカテドラルもあり、争いの舞台にはとても不似合いだ。それでも、襲撃されるという不吉な事態はいつ起こってもおかしくない。それがアタシ達の生きる、マフィアの世界なのだから。



「未来。お前、屋敷やアジトの襲撃に巻き込まれたことはないだろ?お前の親父さんの代は夜襲すらなかったらしいじゃねぇか。
昼間は勝ち目がないと思った相手に夜襲をかけるのは普通だが……お前、どうやらナメられてるらしいな。」



 車窓からチラリと仰いだ空は、群のネクタイと同じホライゾン・ブルー。灰色がかっているとはいえ、晴れて日が出ていることに変わりはないのだ。

 身の程知らず共が……と呟き、群がニヒルな笑みを浮かべる。どうやらアタシが大した存在ではないと思われているらしいことに、静かな怒りの炎を燃え立たせているようだ。
< 46 / 268 >

この作品をシェア

pagetop