bajo la luz de la luna
『お帰りなさい未来!!』



 頭を下げるのも忘れ、人目もはばからず勢いよくアタシに抱きついてきた、サラリと揺れるブロンドに青目の少女。この子はアタシの妹分・イリスだ。

 数年前に路上で雨に打たれて倒れていた所をアタシが見つけ、この屋敷に連れてきた。以来この子はずっとここに住み、15歳になった現在もメイドとして働いている。フランス人の彼女だが、今ではスペイン語がすっかり板についてきた。



『おいおいイリス。俺の前で未来に抱きつくとは良い性格してるな。』



 堪えきれない笑いを口から僅かに洩らし、群が言う。使用人達も、彼につられてクスクスと笑い出した。



『あ!群だ!!こんばんはー!!』

『相変わらず元気だな。つくづくアンジェリーナと似てるぜ。』



 抱擁のターゲットをアタシから群に変え、イリスは赤ん坊のようにキャッキャとはしゃいでいる。ちなみにアンジェリーナとは、チェーロの屋敷で働いているメイドのことだ。群と会うのは二ヶ月振りだから、イリスの嬉しさも大きいのだろう。「お前もこれくらい喜べよ」と意地悪く言う群を一睨みして、アタシは列を成す使用人達に笑顔を向けた。



『……ただいま。』
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