bajo la luz de la luna
「お久し振りです。ドン・ローサに、ドン・チェーロ。」



 ニコリと笑った彼の身なりは、以前の“仮装”と違い、とてもよく似合っている。シンプルな白いシャツに黒のタキシード。そして、飾り気のない職人の手。あぁ、やはりこれが、この人の本来の姿なのだ。

 彼の背後には、彼より20センチ程低い、推定145センチの少年が一人。その人が、新しいクレオのボスだろう。



「ブエナス・ノーチェス、エリオさん。彼が新しいボス、で良いのかしら?」

「はい、弟のルイです。お二人にはこれからお世話になると思いますが、どうぞよろしくお願いします。ルイ、ご挨拶なさい。」



 後ろにスッと退(しりぞ)いたエリオさんに肩を叩かれ、珍しいオーバージーン(茄子色に紺を混ぜたような色)のスーツを着た少年が、おずおずとこちらへ進み出る。自信がないのではない筈。アタシ達を前にして強張っているだけだろう。

 口を開くが、なかなか言葉を発しない彼。緊張のあまり言葉を忘れてしまったのか、肩越しにエリオさんを何度も見つめる。こちらから何か声をかけようかと思案していた時。掌の熱が、スルリと離れていった。
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