bajo la luz de la luna
「まだまだ未熟者ですがよろしくお願いします!えーっと……」

「未来で良いわ。あっちの男も名前で呼んであげて。きっと喜ぶと思うから。」



 小さな、しかし立派な手だと思った。アタシより七つ下といえども男の手をしている。握り締めた時の柔らかさは、まだ子供だったけれども。

 すると、「では、未来さんも僕を名前で呼んで下さい!“ドン・クレオ”って呼ばれるの、あまり好きじゃなくて……」とルイ君。アタシが頷けば、愛らしい瞳を細めて笑ってくれた。道理で、群に名前を呼ばれて嬉しそうにしていた訳だ。



「未来、“あっちの男”って何だよ。婚約者に対する扱いが酷いぞ。」



 苦笑気味に文句を言ってくる群を無視しながら、アタシはルイ君と繋いでいた手をほどく。彼とアタシは、何か根本的に違うらしい。アタシは“さん付け”されるのが、妙に気恥ずかしいというのに。

 大抵は“ボス”か“ドン・ローサ”、“お嬢様”のいずれかで呼ばれていたから、ルイ君のような呼ばれ方は極めて少ないのだ。アタシの心情を察したらしい婚約者が、からかうような顔付きで「照れんな、未来」と笑う。喧しい。そう言わんばかりに一睨みしてやった。
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