bajo la luz de la luna
 ルイ君の後ろでは、アタシと群のやり取りを見ていたエリオさんが必死に笑いを噛み殺そうとしている。いっそ大笑いしてくれれば良いのに。そんな意味を込めて彼を一瞥すれば、「すみません、ドン・ローサ」という言葉が返ってきた。

 クレオの二人がアタシ達を会場まで案内すると申し出てくれたため、ローサ一行と群で、歩き出した彼らに続く。入ってみると、以前はあんなに派手だったクレオの屋敷が落ち着いた上品な雰囲気を醸し出している。「ホワン兄さんの趣味は弟の僕にも理解出来ませんでした」と笑うルイ君に、アタシ達も思わず微笑した。

 やがて、一つの大きなホールの出入口までやってきた。ここで新しいクレオのボスの就任式が行われるようだ。エリオさんが扉を開き、『どうぞ皆さん』と、紳士的なスペイン語で言う。室内に足を踏み入れれば、大きなシャンデリアがキラリと光り、アタシ達を歓迎してくれた。

 ――室内がザワリとなる。鬱陶しい視線を遮るかのように、群がアタシの片手をスッと握りながら隣に立った。知り合いが居ないかと辺りを見回していた時。のっぽでダンディーなおじ様が、その年齢にそぐわない無邪気な笑顔でこちらへと猛進してきた。
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