bajo la luz de la luna

　ダークレッドのスーツに身を包んだ浅黒い肌のメキシコ人男性が、おもむろにネックレスを持ち上げる。彼の前には、オーバージーンのスーツを纏う少年が立っている。心中は様々な感情でごった返していることだろう。

　アタシ達は壇上の彼らの様子をジッと見守る。横顔のみでも分かる、いや、言葉が交わされずとも伝わる、二人の間の意志疎通。一方の目には信頼の炎が、もう一方には決意の灯火が浮かんでいる。

　少年の首に誓いの鎖がかけられた。その重さが持つ意味を彼はこれから見つけ、自分の信念としなければならないのだ。



『私は今、ルイ・アルバラードをクレオファミリー19代目ボスに任命した。皆さん、どうか盛大な拍手を！』



　大きな音が会場いっぱいに巻き起こった。不安はあるだろうが、誰もが若きボスの誕生を喜んでいる。アタシも精一杯両手を叩いた。

　――が、嫌な予感がよぎり、拍手をやめる。段々と小さくなる祝福の音と、どよめき始める来賓達。思わず隣に座る婚約者の顔を見上げる。“何かあるな”と、彼の目が言った瞬間。アタシは自分の勘の鋭さを改めて実感した。



「Buenas noches, todos invitados.(こんばんは、お集まりの皆様。)」