bajo la luz de la luna
 いつか見た白スーツの男、フランシスコ・ベラノがそこに立っていた。来賓達は奴が誰だか分からないのか、首を捻っている者ばかり。アタシ達の周りの空気だけが、不自然に凝固していた。

 壇上のイグナシオさんが『あなたを呼んだ覚えは……』と困惑している。きっと、奴が誰だか知っているのだろう。



『あぁ、招待状はもらっていないな。まだ正式に“復活表明”をしていないから、僕のことをご存知ない方々も大勢いらっしゃる。』



 奴は会場内をぐるりと見回し、ニヒルに笑う。悪寒が走るその表情に、来賓達がざわついた。チラリと振り返れば、険しい顔付きのアルバラード一家。特にルイ君は、路頭に迷った子犬のようだ。



『僕の父上の名はフリアン・ベラノ。こう言えば、頭の悪い君達にも分かるだろう?』



 場内のざわつき方が変わる。『おいっ、ソルの末裔だぞ!』という声が、全てのきっかけだった。それを聞いた奴は、満足そうに笑う。



『僕は彼の息子のフランシスコだ。今日は新しいクレオのボスが誕生したそうだから、祝いに来てやったよ。』



 ――誰もお前なんかに頼んでいない。アタシがルイ君なら、そう言っただろう。
< 88 / 268 >

この作品をシェア

pagetop