bajo la luz de la luna
『……帰りなさいよ。ここは招待されていない者が来る所じゃないわ。』

『おっと、めでたい席で発砲する気か?しかも自分の怒りを隠すような言い方をするとは醜いな。』

『黙れ。ルッツさんに謝れば、無傷で帰してやるけど?』

『謝る?意味が分からないな。』



 引金を引きそうになったアタシを制し、群が奴の前に進み出た。来賓達は何が起こるか分からない恐怖からか、皆怯えている。奴より5センチ程背の高い群が、その艶(あで)やかな唇をそっと開いた。



『俺は、今立ち去ることを勧めるぞ。本当にルイのボス就任を祝いに来ただけなら、今日の所は帰ってくれねぇか?』

『ふん。お前に言われたくはないが、そうしてやるか。お前はもう少しマシな奴だと思ってるよ。そこの女と比べてな。』



 腹立たしい台詞を吐き、奴はくるりと背を向ける。発砲してやりたかったが、それでは父の教えに反することになる。“撃つな”、と自分に言い聞かせた。

 ムカつく白スーツが去れば、場内はそれはそれは和やかになった。イグナシオさんの『さぁ、食事にしよう!』という言葉と共に、大勢のメイド達がカートを押して現れる。夕食(セナ)の始まりだ。
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