bajo la luz de la luna

『ボスの結婚式かぁ……凄く楽しみだけど、きっと当分先よね。』

『ええ、そうだと思うわ。来年の春か、アタシが二十歳になってからね。』



　そう口にすると、『若いって良いわねぇ』とソニア。黙っていれば20代に見える彼女は、そう口にしてルイ君を驚かせていた。どうやら彼は、ソニアを当然20代だと思っていたらしい。彼女に初めて対面した日のアタシのように。

　グレイの『お姉さん、ワインをもう一杯つごうか？』という一言で更に顔を綻ばせるソニア。バイオレットのイブニングドレスの胸元でゴールドのチェーンを揺らしながら、豪快にそれを飲み干した。フィノは辛口だと聞いたけれど、大丈夫なのだろうか。



『ボス、ソニアなら平気だぜ。いくら飲んでも酔いやしねぇ！』



　ガハハと笑うグレイに、うんうんと頷くガルシア。酒豪の彼女が酔い潰れている所は確かに見たことがない。父と良い勝負かもしれない、と思った。

　グレイの左手薬指が照明に反射し、思わず目を閉じかける。一度だけ会った彼の奥さんと幼い愛娘を、ふと思い出した。彼女達は元気だろうか。そう思った時。アタシの心を見透かしたような視線を、横に腰かける婚約者が向けてきた。