魔法使い、拾います!
「ティアはずっと一緒に育ってきた、僕にとってかけがえのない人です。そのティアが会いたいと言っている。僕はティアに会って、事の真相を確かめないといけません。ティアが王の側室だなんて……そんなことあってはならない。」

幼い時に両親を亡くし、魔法の修行に行かされ、婚約者を王の側室にされた挙句、犯罪者に仕立て上げられるとは。ヴァルの人生、波乱万丈にも程がある。

「少し感情的になってしまいましたが、こんな理由で僕は城を追われ、あの路地裏に隠れていました。新居もまだ見つけていない宿無しなんです。」

「……分かった。……無理矢理言わせてごめんなさい。」

リュイは暗い表情で頭を下げた。

「何か、しんみりさせてしまいましたね。」

「そんなことない……。嫌がるヴァルに話をさせたのは私だから。」

ヴァルは、ニコッと笑ってスープを口へ運ぶ。

「いえ、遅かれ早かれ言わなくてはならなかった事です。主は悪くありませんよ。ほら……せっかくの美味しいスープが冷めてしまいます。いただきましょう。」

何事もなかったかのように食事を再開させたヴァルだが、心中は穏やかではないはずだ。ヴァルの気遣いが胸に刺さる。

「えーとね……。こんな空気の時にごめん。ちょっと方向性が反れるんだけど……今の話にちょっと疑問が……。」

リュイの解釈が正しければ、今聞いた話は物凄く重要案件なのではないだろうか。ヴァルの人生、いやこのルトアンゼ王国をも揺るがす大事件だ。
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