魔法使い、拾います!
「王様ってこの国で一番偉い方だよね。王様なら側室が居てもいいの?」

「ダメです。王なら尚更許されません。もしこれが本当の話なら、一夫一婦制を謳う我が国の信用問題が問われるでしょう。そして王妃の母国とは国際問題に発展し兼ねません。しかもティアを巻き込もうだなんて言語道断です。もしこの話が本当のことならば、僕が王の息の根を止めて差し上げますよ。」

今の言葉にリュイの背筋は凍り付きそうになった。ヴァルは何事もなかったかのようにスープを口に運んでいるが、その何気ない仕草が不気味にさえ感じられる。

今のヴァルの言葉に嘘はないだろう。一瞬で移動してしまえることや、薬を作れるところを目の当たりにして、ヴァルをほら吹き扱いする理由がない。これが魔法使いの力。

「主、この件は他言無用に願いますよ。」

「も……もちろん。」

リュイは不謹慎にも、ヴァルと秘密を共有できたことに嬉しさを感じてしまった。しかし、何故だろう。胸のモヤモヤは治らない。

「ティアさんに会って確かめないと……だね?」

「はい、何が何でも会いに行きます。」
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