魔法使い、拾います！

しばらくして、またもやカランカランと扉の開く音が聞こえた。

「リュイちゃーん？今日はお休みなのかしらー？」

一階のお店から声をかけられて、リュイは現実に戻る。

「いけない！」

すっかりお店のことを忘れていた。表の看板もcloseにしたままだ。慌てて階段を駆け下りる。

「僕も行きます。手伝わせて下さい。」

ヴァルも椅子から立ち上がった。

階段から降りて来る青年を見て、買い物に来た近所のチャムおばあちゃんの目が丸くなった。初めてみる青年に興味津々だ。

「あらあら、リュイちゃん。こちらどなた？」

「しばらくお店を手伝ってもらうことになったヴァルだよ。」

「ヴァルと申します。ハラで行き倒れていたところを、主……、リュイに助けてもらいました。しばらく部屋を貸していただけることになったので、お礼にここのお手伝いをと思いまして。」

「まぁ、そうなの？あら、そういえば……ふふふ……。血は争えないわね。」

「血？どういうこと？」

「いえね……昔、あなたのお父さんとお母さんも、行き倒れた男の子を連れて来たことがあったなぁって、ふと思い出したのよ。」

懐かしそうに微笑むチャムおばあちゃんが、また、ふふふと笑う。

「確か十年くらい前だったかしら。丘の上の……町長さんの家の裏手ね。あの先を下ったところに立ち入り禁止の野原があるでしょう。あそこって、本当は近寄ってはいけない所なのに、たまにあなたのお父さんとお母さんは野原へ行っていたのよ。ある日、そこからリュイちゃんと同じような年頃の男の子を連れて帰ってきてね。たまたま私その場に居合わせちゃって。だからよく覚えているの。でも次の日ここに来たらその子はもう居なかったわ。だからたった一晩の話なんだけれどね。ふふふ…懐かしいわ。」

「へぇ、そんな事があったんだ。私ちっとも覚えてないよ。」

十年前といえば、隣に佇むヴァルが丁度修行のために洞窟へ来た頃になる。チラッとヴァルを見上げると、おばあちゃんと同じような表情をしているではないか。

「ヴァル……もしかして……。」