魔法使い、拾います！

頭を抱え突然大声で叫んだリュイに驚いて、ヴァルが駆け寄って来た。

「ご…ごめん。何でもないの。ちょっと、自分に対する戒めの叫び。」

「戒め？」

「そう。変なこと考えちゃった自分への戒め。ごめんね、ヴァル。チャムばあちゃんも、驚かせてごめんね。」

何という事を考えてしまったのか。ばか、ばか、ばか。猛烈に恥ずかしい。ティアは元々ヴァルの婚約者なのだ。王にさらわれて怖い思いをしているはずなのに。いくらヴァルと一緒に居たいからって、こんな浅ましい事を考えた自分が嫌だ。

「リュイちゃん。どんな変なことを考えてしまったのか分からないけど、自分に正直でいらっしゃいな。私はどんなリュイちゃんでも大好きよ。」

ゆっくりと側に来て、背中をさすってくれるおばあちゃんに微笑み返す。

「はい、お代は五十ラピでいいかしら？じゃあねリュイちゃん、また来るわ。」

リュイの手のひらにお金をのせて、チャムおばあちゃんはお店を後にした。ヴァルと一緒に手を振って見送る。

「素敵なマダムでしたね。」

「うん。そこを下ったところのパン屋のおばあちゃんなの。毎日食べているのはチャムばあちゃん家のパンだよ。」

「そうですか。」

リュイは看板をcloseのままにして、二階へと上がっていった。