魔法使い、拾います！
「こんな僕にもね、実は忘れられない女の子がいるんです。初恋と呼ぶのなら、その子でしょうか。でも、いくら望んでも、決して手に入れることの出来ない女の子だから……。僕の思い出として大切にしまっておきたいんです。」

優しい紺碧の瞳がリュイを捕らえる。そんな目で見つめられては、逃れられないではないか。

ヴァルの思い出の中の女の子。ティアとは違う感情で大切にしたい女の子。どんな出会いをして、どんな風に関わったのだろう。想像するだけで胸が痛い。

「主……。」

静かにソファーから立ち上がってヴァルはリュイが座っているダイニングまで来た。そう広くない部屋だ。分かれて座っていても十分会話はできていた。

「リュイ……。」

そう呟くと、ヴァルは座ったままのリュイを椅子ごとふわりと包み込んだ。

「え？ヴァル？ちょっと……？」

猛烈に恥ずかしさがこみ上げるが、それを上回るほどに嬉しくて心地いい。ドキドキと高鳴る鼓動がヴァルに伝わらないように必死で呼吸を整える。

「さて、遊びはこれくらいにして休みましょうか。この先は主が大人になったら、どなたかと体験してください。僕はティアと……ふふふ。では、お先に失礼します。」

そう言い残し、ヴァルは借りている両親の寝室へと姿を消した。

「も……もう！何なのー！馬鹿にして！」

顔を真っ赤に染めたままで、憤慨しながらリュイも自室へと消えて行った。
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