魔法使い、拾います!
次の日の昼過ぎ、ララを連れてグレンがやって来た。ヴァルを見るグレンの目がやはり冷ややかである。

「リュイ、久しぶり!元気にしてた?兄さんから大体の話は聞いたわ。ご側室様の件よね。それはもう城内大騒ぎよ。」

ララはリュイに駆け寄ると、ぎゅっと抱きしめた。少しウェーブのかかったララの髪がくすぐったい。

「で、あなたがヴァルね?あら、王宮の廊下ですれ違った方じゃない?大変な嫌疑をかけられてお気の毒です。」

否応なしにララはヴァルの手を取り握手をする。ララにかかれば魔法使いも幼馴染も扱いは同じになるようだ。

やはり思った通り、ララは王宮の事情に詳しいらしい。何て心強い味方であろうか。ララがいれば百人力のような気がしてくる。

「じゃあ早速だけど、私の知っている情報を教えるわ。ほとんどが噂話だけどね。」

ララはどかっと椅子に腰かける。とても王宮に仕えている女性とは思えない豪快さだ。さすがグレンの妹である。

「言える範囲でいいからね?」

「はいはい。」

ララは、軽くリュイの肩を叩いた。ララにとってリュイは自分の危険を冒してでも協力したい大事な存在なのだ。

ララとグレンの兄妹は、幼い頃町長の子供というだけで腫物扱いや特別扱いが日常茶飯事だった。そんな立場にほとほと嫌気がさしていたララ達にも、唯一身分の垣根を感じさせない友人が出来た。リュイである。

この天然かつ純粋すぎる娘のおかげで、今こうして町の皆と仲良くいられるのだ。そんなリュイがララのリスクを承知の上で、頼み事をしてきた。断る理由などあるだろうか。
< 39 / 100 >

この作品をシェア

pagetop