魔法使い、拾います!
「えーと……。ヴァルが知りたいのは、ご側室様がどこにいるかって事だっけ?」

「ララ。申し訳ありませんが、ご側室様という呼び方は止めてもらえませんか。僕の婚約者です。ティアと呼んでください。」

「そうね、配慮が足りなかったわ。ごめんなさい。じゃ、続けるわね。ティア……さんは、たぶん北の執務室に居るはずよ。執務室なのに下っ端の魔法使い達が入り口を警護していたもの。王の私室はいつも通りの感じだったから。」

「そうですか。ありがとうございます。で、城内の雰囲気はどうですか?騒がしい感じですか?」

「お察しの通り、王宮内ではピア様のご側室の話で持ち切りよ。一夫一婦制を貫いてきたルトアンゼ王室の慣習を壊してしまったのだもの。一夜のお慰みの相手にしておけば問題なかったのに。あ……ごめんなさい。」

ヴァルはテーブルの上で、ぎゅっと拳を握った。

「王妃様はさぞやお悲しみの事だろう。王族の婚姻なんて国と国との友好のための、政略結婚だからな。そこに愛は育ったのか、はたまた人質扱いのままなのか…。まぁどちらにしても、信頼関係が崩れれば友好は成り立たなくなる。」

グレンは次期町長らしい真っ当な発言をした。

ララが言うには、今回の事は王宮内でも賛成派と反対派がいるようで、むしろ賛成派の方が圧倒的に少ないらしい。

それもそのはず。これを許せば、海を越えてルトアンゼの島国に輿入れしてきた王妃を蔑ろにし、王妃の祖国をも侮辱する行為になるのだから。

「一国を担う王が、わざわざそんなリスクを侵す意味が僕には理解できません。そこまでしてどうしてティアを……。そして何故……僕を……。」

「単純に王はティアが欲しかった。それには婚約者が邪魔だった。それだけのことじゃないのか?」

グレンが意地悪く言ってのけた。

「それならば、こんな風に国を巻き込むような事をしなくても、王という立場を使えばどうにでも出来る話です。王は冷静で頭のいい方だ、感情に任せて舵を取るような方ではないと師匠から聞いています。もしかして誰かが王に入れ知恵を……。」

今までにないほど眉をひそめ、ヴァルは難しい顔をした。
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