魔法使い、拾います!
「やはりそうですか。師匠が王のために一枚噛んでいるのは間違いなさそうです。師匠は王の忠実な(しもべ)ですから。……これは益々厄介ですね。」

王妃の故郷スフランと友好関係でいたい王族たちや政治家たちは、王の愚行ともとれるこの行為を絶対に受け入れないだろう。もし王の味方に付く者がいるとしたらそれは、王直属の配下にある魔法使い達しか考えられない。

「雑魚たちはどうにかなるとしても、師匠はそう易々と折れてはくれないでしょうね。参ったな。」

ヴァルは腕を組んで天井を見上げた。その姿がまた様になる。ティアの事を考えてこんなにも頭を悩ませているのに、その姿に見惚れるなんて。

切なげにヴァルを見ているリュイを、グレンもまた切なそうに見つめていた。その三人の様子をララが観察する。

「ふぅん、面白いことになっているじゃない。あの、お子ちゃまだったリュイがねぇ……。兄さんも気の毒ね……。」

「ララ?何……?」

「何でもないわ。リュイ頑張ってね。」

「何を?」

ララの言葉の意味が分からず、リュイは小首を傾げた。

今リュイが思っている事と言えば、無理だと分かっているのにヴァルにティアの所へ行ってほしくない。ということである。たった三日だが、とても長い間一緒に居たような感覚だ。これからもずっとここに居てほしい。

そしてこんな感情を抱く自分に腹が立つ。堂々巡りが嫌になる。
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