魔法使い、拾います!
「主。」

不意に声をかけられヴァルを見る。すると、にこっとリュイに笑顔を見せてヴァルは静かに言った。

「主、短い間でしたが楽しかったです。会うはずのなかった君に出会えて、僕はとても嬉しかった。」

会うはずのなかった君って……。どういう意味だろう。

たまたま偶然路地裏で出会った事を言っているの?

それとも以前にどこかで会っていて、もう会えないと思っていたのに会えたって事?

父さんと母さんが連れてきた男の子ってやっぱりヴァルの事なの?

色々な考えが一瞬にしてリュイの脳内を支配する。

「明日、王宮へ行きます。正々堂々正門から入ってやりますよ。」

「え、明日?わ……私も行く!ヴァル私も連れて行って!」

咄嗟に口をついて出た言葉。足手まといになるのは承知の上。断られるのも勿論分かっている。しかし、どうしても言わずにはいられなかった。

「申し訳ありませんが、いくら主の命令でもそれとこれとは話が別です。連れては行けません。」

ヴァルが困った顔をしている。困らせているのは自分だ。分かっている、分かっているけど、それでも付いて行きたい。ヴァルの側に居たい。

「当たり前だ、お前が行ってどうするんだよ。こいつを助けて泊めてやっただけで十分だろう?」

「そうよ、リュイ。ヴァルの言う事を聞きなさい。北の守護長を先頭に、魔法使い達と渡り合うのよ?どう控えめに言っても、邪魔になるわ。」
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