魔法使い、拾います！
「お嬢さん済まないね。ここは王宮にある私の執務室だよ。急にここへ移動したのに驚かない所を見ると、ヴァルの移動魔法を見たようだね。」

「あ……はい。カタの自宅まで一緒に移動しましたから。」

ジョナのあまりの威厳に声をかけ辛いのだが、聞かずにはいられない。

「あの……。もしかして北の守護長様ですか？そして、こちらがティア……さん？」

「ほぉ。ヴァルに聞いたのかね？可愛い私の娘を裏切ったヴァルに。」

「ティアさんを裏切るなんてとんでもない！何かの間違いです！今だってヴァルは、ティアさんに会うための方法を考えていたんですよ。自分の大切な人だからって！」

「ふむふむ、余りにも偽善的なセリフではないか。そして、お嬢さんの胸元のペンダント……。実に不愉快だ。」

咄嗟にリュイはテントウムシをぎゅっと握りしめる。なぜここでペンダントの話が出るのだろう。そう言えば、ヴァルもペンダントを気にしていた。

「このペンダントが何だって言うんですか？これは亡くなった両親からもらった形見です。今回の事とどんな関係があると言うんですか？」

「それが大いにあるのだよ。」

関係ある？どうして？全く想像できない。だってこれは、幼い時に両親からもらった物なのだ。どんな風に関係があるというのだろうか。

「主！？無事ですか？」

血相を変えて突然ヴァルが現れた。そのヴァルの第一声に、ジョナはあからさまな怒りを見せる。

「ヴァル！貴様が先ず心配するべきはティアであろう！この期に及んでこの様とは、恥を知れ！」

部屋の空気が震えるほどの重低音が、怒りと共に鳴り響く。激高という言葉が相応しい。
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