魔法使い、拾います!
ティアはリュイの顔とペンダントをまじまじと見つめ、今更ながらの質問をした。

「ところで、あなたは誰?ヴァルとどういう関係なの?」

しまった。自分はティアの事を聞いて知っているから、てっきり相手も自分を知っているという感覚だった。失礼な事を言ってしまったと、今更恥ずかしさで顔が熱くなる。

「ご、ご、ご、ごめんなさい。私はリュイです。ハラの路地裏で、ケガをして倒れていたヴァルを偶然見つけました。ケガもしていたし、帰る所も無いと言うので私の家を貸しました。ただそれだけです。婚約者のティアさんが心配するような事は、これっぽっちもないです。どうか安心してください。」

リュイはあたふたと説明した。誤解があってはならないと、最小限の言葉を使ったつもりだが、上手く伝わっただろうか。

散々聞いたヴァルの言葉であったが、『僕の婚約者』と改めて宣言されると、やはり胸が痛くて仕方がない。危なくヴァルが自分のためにここへ来てくれたのではと、勘違いするところだった。

「そうだったの。ヴァルを助けてくれてありがとう、リュイさん。」

穏やかに笑うティアの余裕の表情がずるい。リュイの胸の痛みは続く。

「あのー、聞いてもいいですか?ティアさんは本当に王様の側室になるつもりなんですか……?」

「あら、気にしてくれるの?」

「だって、ティアさんはヴァルの大切な婚約者だから。」

「そうね、簡単に言うなら申し出を受け入れてみた、といったところかな。でもヴァルったら、このタイミングでリュイさんに会ってしまうなんてね。テントウムシのペンダントかぁ。話し合うまでもないようね。」

またペンダント……。

「どういう事ですか?」

「ごめんなさい。私の心の声よ。聞かなかったことにしてちょうだい。代わりに、物凄い情報を教えてあげるから。」

「え……?物凄い情報……ですか?」

そんな勿体ぶった言い方をされては、聞きたくなってしまうではないか。
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