魔法使い、拾います!
「王であるピア様と王妃シャルロット様と私の秘密。」

「秘密?」

「そう……秘密。実はピア様がね……シャルロット様を母国のスフランに返してあげたいんですって。それで空席になる王妃の椅子に、私が座ることになったの。」

「えー!?どうして!?何で急にそんな話になるんですか!?」

「しー!声が大きいわ。これ、相当な極秘情報だから、洩れたらまずいの。」

リュイは慌てて自分の口元を手で覆う。そして小声で尋ねた。

「それは決定事項なんですか?」

「ヴァル次第だけど、決定みたいなものね。」

「……?どういうことですか?」

リュイには全く理解できない。王が王妃と別れて、新しくティアを王妃に迎える?しかもそれはヴァル次第って。そんな夢のようなおとぎ話は聞いたことがない。

「同盟はシャルロット様が母国に帰っても、絶対に取り消さないってスフラン側が確約して下さったようだから、ルトアンゼ王国が不利になることはないわ。安心して。」

「そんなことを聞いているんじゃありません!ヴァル次第だなんて言ってますけど、もし本当にティアさんが王妃になってしまったら、ヴァルはどうするんですか?」

「ヴァル……どうするかしら。案外、喜ぶかもしれないわよ?」

おっとりとした口調で答えるティアに、リュイは段々と腹が立ってきた。自分たちの都合でヴァルを振り回して、楽しんでいるのだろうか。そんなに重大な理由があるのなら、最初からヴァルに教えてあげれば良かったのだ。

「酷い!喜ぶはずないでしょう!どうしてそんなことが言えるんですか?そもそも、どうして婚約しているティアさんが王妃になるんですか?王妃になりたい人なんて、きっと他に沢山いますよ!」

勢いのままに感情をぶちまけて、リュイは息が上がってしまった。息巻くリュイに悲しそうな笑顔を向けたままティアは黙って聞いている。その姿を見てリュイは少し冷静になれた。

「ちょっと……興奮してしまいました。失礼なことを言ってすみません。」

リュイは素直にティアへ頭を下げた。

「気にしないで。それより聞いてくれる?お城へ着任してからの事。ヴァルを助けてくれたリュイさんには話しておくわ。……私は着任早々に王の警護を命じられてね。てっきりピア様の元へ行くと思っていたのだけど。」

リュイが静まったのを確認すると、ティアは事の発端をぽつりぽつりと話し始めた。
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