魔法使い、拾います！

「安心なさいな。王妃になるのだもの、婚約の白紙は不名誉にはならないわ。陛下直々に北の守護長と段取りしたのだから、間違いなくてよ。」

「もしや……北の守護長がそう申したのですか？」

「ええ。」

ティアに衝撃が走った。お父様の差し金？突然こんなことを言われても、一連の話が全く理解できない。ヴァルとの婚約を白紙にして、シャルロット様の代わりに王妃になれと？

「シャ……シャルロット様……。申し訳ありません。この話が上手く飲み込めなくて、かなり混乱しています。」

「そうね。そうよね。無理もないわ。では……。あまり説明にはならないでしょうけど、しばらく私の独り言を聞いていて下さる？」

「あ……はい、もちろん。それはお聞きいたしますが……。」

戸惑いの表情を隠せないでいるティアは、それでも何とか笑顔で答えた。

「私は祖国スフランの王女として生まれたけれど、第七王女で側室の子なの。この意味が分かるかしら？王族の名に恥じないように、郊外の屋敷で好きに暮らしなさいってことよ。だから……まさか自分が王妃候補に選ばれて、ルトアンゼのような富国に嫁ぐなんて思ってもいなかったわ。何がどう間違うと、こんなことが起こってしまうのかしらね。人生って面白い。」

シャルロットは無意識に皮肉を込めた笑みを浮かべた。