魔法使い、拾います!
第五話 真実を探せ
ティアが部屋へ踏み込もうと決意する半刻ほど前。

ヴァルとジョナは隣室に入り、向かい合って立った。ジョナはアンティークな木製の仕事机を背にし、ヴァルは入り口の扉を背にしている。

ジョナは不機嫌な表情を崩すことなく、机の引き出しから何かを取り出した。ヴァルに見えるようにそれを差し出す。チャリっという音を奏でたのはシルバーで出来たテントウムシのペンダントであった。

「師匠!どうしてそれを!?僕の荷物から持ち出したのですか?」

「たまたま見つけてしまったのだ。見つけた以上、お前の手元に置いておくわけにはいかんだろう。素直に渡すはずがないと思い、お前には悪いが城から出てもらった。」

「僕に冤罪を被せて守護長たちに襲わせたのは、これを奪うためだったのですか?」

「そうだが、何か問題でもあるかね?そもそも処分したはずのこれを、なぜお前が持っている?ゴミ捨て場を漁ったのか?」

「そのペンダントは僕の宝物です。どんなことをしても取り戻したかった。その僕の気持ちは、師匠には理解出来ませんよ。返してください。」

「返せ?ヴァルよ、私との約束を忘れたのか?ペンダントごときと油断したわ。これは魔法で消滅させておくべきだったな。」

「やめて下さい!!約束は忘れてもいませんし、破ってもいません。」

「では何故、これと同じものをさっきのお嬢さんが首に下げていたのだね……。ティアが側室になったのをいいことに、あの娘に会いに行ったのではないのか?」

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