魔法使い、拾います!
ヴァルは十歳の時、ティアと共に魔法使いになるべく洞窟へと修行に来た。ジョナに連れられて、丘になっているカタの町中をくねくねと登り切る。
町のてっぺんまで来ると今度は裏側へ一直線に丘を下った。下った先には野の花が咲く平原と、広がる海が見えた。海との境は断崖絶壁で、足を踏み外せば真っ逆さまである。
ヴァルとティアは、その崖ギリギリの所までジョナに連れて来られた。恐る恐る下を覗いてみる。二十メートルほどだろうか、足がすくむほどの高さであった。
「この崖の中腹に洞窟の入り口がある。ほら、ここに細い道があるだろう。ここを下りて行くのだよ。さぁ…もう少しで到着だ、行こう。」
よく見ると、崖にはすれ違いが出来ない程に狭い、階段状の道らしきものがあった。岩肌に鎖を張っただけの手摺りがあるにはあったが、ここを下りる恐怖を打ち消せるほどの代物ではなかった。ジョナはすたすたとそこを下りていく。
「ティアどうした?着いてこい。慎重に降りねば落ちて死ぬぞ。」
二・三段下ったところでジョナは振り返り、足をすくませているティアに激を飛ばした。
「は……はい、お父様。」
分かってはいても、どうしても一歩が踏み出せない。ヴァルはそんなティアの背中を優しく撫でた。
「どうしようヴァル。足が動かないよ……。」
「大丈夫、落ちないように僕が後ろから支えます。だからティアは安心して先に下りて下さい。」
「……ヴァル、年下のくせに生意気よ。でも、ありがとう。お姉さんの私がしっかりしないといけないのにね。ごめんなさい。」
「ははっ。もちろんティアの事は頼りにしています。」
「もぉ、心がこもっていないのよ!じゃあ先に下りるわ。ちゃんと着いてきてよ。」
ヴァルがジョナに引き取られて七年、当然ティアとも一緒に暮らしてきた。一言で言うならば、ティアは姉のように慕ってきた大切な存在だ。そのティアとこの先は二人で支え合って修行に励まなければならない。
そんな決意も虚しく半年程経った頃、ヴァルはこの狭い階段を歩いていた。今度は上りを。しかも一人で。
町のてっぺんまで来ると今度は裏側へ一直線に丘を下った。下った先には野の花が咲く平原と、広がる海が見えた。海との境は断崖絶壁で、足を踏み外せば真っ逆さまである。
ヴァルとティアは、その崖ギリギリの所までジョナに連れて来られた。恐る恐る下を覗いてみる。二十メートルほどだろうか、足がすくむほどの高さであった。
「この崖の中腹に洞窟の入り口がある。ほら、ここに細い道があるだろう。ここを下りて行くのだよ。さぁ…もう少しで到着だ、行こう。」
よく見ると、崖にはすれ違いが出来ない程に狭い、階段状の道らしきものがあった。岩肌に鎖を張っただけの手摺りがあるにはあったが、ここを下りる恐怖を打ち消せるほどの代物ではなかった。ジョナはすたすたとそこを下りていく。
「ティアどうした?着いてこい。慎重に降りねば落ちて死ぬぞ。」
二・三段下ったところでジョナは振り返り、足をすくませているティアに激を飛ばした。
「は……はい、お父様。」
分かってはいても、どうしても一歩が踏み出せない。ヴァルはそんなティアの背中を優しく撫でた。
「どうしようヴァル。足が動かないよ……。」
「大丈夫、落ちないように僕が後ろから支えます。だからティアは安心して先に下りて下さい。」
「……ヴァル、年下のくせに生意気よ。でも、ありがとう。お姉さんの私がしっかりしないといけないのにね。ごめんなさい。」
「ははっ。もちろんティアの事は頼りにしています。」
「もぉ、心がこもっていないのよ!じゃあ先に下りるわ。ちゃんと着いてきてよ。」
ヴァルがジョナに引き取られて七年、当然ティアとも一緒に暮らしてきた。一言で言うならば、ティアは姉のように慕ってきた大切な存在だ。そのティアとこの先は二人で支え合って修行に励まなければならない。
そんな決意も虚しく半年程経った頃、ヴァルはこの狭い階段を歩いていた。今度は上りを。しかも一人で。