魔法使い、拾います!
「そうか。それは辛かったね。」

「師匠は魔法の杖から七色の光を出せって言うんです。僕、青い光と赤い光を出せるようになったのに、師匠はまだダメだって。ティアはやっと赤い光を出せるようになって、赤だけなのにすごく褒められて。他の子たちも一色出ればいいって褒められるんです。どうして僕だけ叱られないといけないんですか?きっと師匠は僕の事を嫌いなんだ。」

どんなにしっかりしているように見えても、十歳の少年である。抱えきれなくなるほどの大人の期待は、時に逆効果になってしまうのだろう。

「なるほど。師匠は他の子よりも、君への期待が大きいんだね。他の子達からひがまれてはいないかい?例えば、嫌がらせを受けたりとか、仲間外れにされたりとか。」

「師匠はティアの本当のお父さんで、僕の育ての親だから。洞窟に着いた時から僕とティアには誰も近付いて来ません。」

「あぁ、そういう事かい。うんうん。俺は大人で、しかも娘が居るからね。君への師匠の気持ちは、分からなくもないな。」

「どういうこと……ですか?」

「本当に大切に思っている子には期待が大きくなって、つい厳しくしてしまう時がある。自分の全てを託したくなるんだな。子供にとっては迷惑かもしれないのにね。」

「そんなわけありません。師匠には本当の子供のティアが居るのに。僕なんて。」

ジャンはダイニングチェアーに座るヴァルをわざわざ立たせると、思い切り抱きしめた。

「俺が思うに。ヴァル君にはきっと、これが足りていなかったんだな。してもらったことがあるかい?このぎゅーがあれば辛い修行もきっと耐えられる。もう二つの色を使えるようになっているんだろう?頑張ったね。偉かったね。君なら七色の光だって絶対に習得できるさ。」
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