魔法使い、拾います！
目を赤くして呆然としているヴァルの顔の前に、キャラの優しい笑顔が下りてきた。ヴァルと目線を合わせてから、キャラはゆっくりとヴァルの頭を撫でる。

「朝日が昇る前に洞窟に到着するようにしてあげるから、少しの間だけでも眠っていくといいわ。」

ヴァルはキャラに促され寝室に入った。寝室にはベッドが三つ置かれていて、真ん中のベッドには女の子がスヤスヤと寝息をたてている。

「家の眠り姫よ。眠たがり屋さんでね。今日は夕食を待たずに寝てしまったわ。全く呆れてしまう。」

ジャンのベッドをお使いなさい。と言ってキャラは眠り姫の隣のベッドを貸してくれた。黒髪の少女は心地よさそうに眠っている。布団にもぐりこんだヴァルはその寝顔をしばらく眺めていた。

「立場は違うけどこの子も修行中の身か。僕より年下に見えるけど、いくつなんだろう。はは……しかしよく寝ている。可愛いなぁ……。」

ヴァルはそんなことを思ってしまった自分が恥ずかしくなってしまった。同じ女の子でも、ティアには抱いたことのない感情だ。

「よし、絶対に一人前の魔法使いになっていつかお礼に来よう。その時はこの子とも話をしてみたいな。その時は……僕が……ぎゅーって……して……。」

うとうとしたかと思っていたら、ヴァルはいつの間にか深い眠りへと誘われていた。
日々の緊張の中、里子に出されてから常に気を張って生きてきたのだ。こんなにぐっすり眠ったのは初めてであった。

ジャンに起こされるまでヴァルは夢を見る間もなく眠りについた。
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