魔法使い、拾います!
王宮の東側にある守護長室にも、テントウムシのペンダントを握りしめている人物が居た。ティアの口添えもあり、あの後ヴァルはペンダントを返してもらえたのだ。
ティアのケガはヴァルが魔法で直ぐに治し、二人の父であるジョナの許しを得て、自室へと移動していたのだ。
初夏のまだ火の気のない暖炉を前にして、ヴァルは床の上に腰を下ろし胡坐をかいていた。簡単な調度品のみが無機質に置かれたこの部屋からは、執務室としての稼働が間もないことをうかがえる。
ソファーには座らず、ティアも同じように足を崩してヴァルの隣で寛いでいた。
ティアはペンダントを握るヴァルの手にそっと触れた。
「そのペンダント、リュイさんが着けていたのと同じものよね?」
「……はい。……お揃いなんです。彼女はそれを知りませんけどね。」
罰悪そうにヴァルは答える。
しかし、ティアが声をかけてくれてヴァルは正直ほっとした。自分からどう声をかけたらいいのか、考えあぐねていたからだ。
この、事件とも呼べる一連の騒動は、自分の手の中にあるペンダントが発端だったのだ。ペンダントを手放さなかったことが、こんなに師匠ジョナを怒らせることになろうとは思いもよらなかった。
しかし、例えこうなることが予測できたとしても、あの日のヴァルにペンダントを捨て去ることなど出来なかっただろう。今のヴァルがあるのは、紛れもなく温かかった一夜の思い出と、このペンダントの約束があったからだから。
ティアのケガはヴァルが魔法で直ぐに治し、二人の父であるジョナの許しを得て、自室へと移動していたのだ。
初夏のまだ火の気のない暖炉を前にして、ヴァルは床の上に腰を下ろし胡坐をかいていた。簡単な調度品のみが無機質に置かれたこの部屋からは、執務室としての稼働が間もないことをうかがえる。
ソファーには座らず、ティアも同じように足を崩してヴァルの隣で寛いでいた。
ティアはペンダントを握るヴァルの手にそっと触れた。
「そのペンダント、リュイさんが着けていたのと同じものよね?」
「……はい。……お揃いなんです。彼女はそれを知りませんけどね。」
罰悪そうにヴァルは答える。
しかし、ティアが声をかけてくれてヴァルは正直ほっとした。自分からどう声をかけたらいいのか、考えあぐねていたからだ。
この、事件とも呼べる一連の騒動は、自分の手の中にあるペンダントが発端だったのだ。ペンダントを手放さなかったことが、こんなに師匠ジョナを怒らせることになろうとは思いもよらなかった。
しかし、例えこうなることが予測できたとしても、あの日のヴァルにペンダントを捨て去ることなど出来なかっただろう。今のヴァルがあるのは、紛れもなく温かかった一夜の思い出と、このペンダントの約束があったからだから。