僕は何度でも、君の名前を呼ぶよ。
学校も終わり、一人家路につく俺。
———2年前、俺は交通事故にあったんだそうだ。
横断歩道を渡っている時に大型トラックにはねられるも、奇跡的な回復をしてここまで至っている。
現在は高校二年生として勉学にはぐんでいる普通の高校生である。
名前は風磨 和玖(かざま わく)。
ここまでは普通なのだろうが、あの事故からちょっとだけ俺の人生が狂った。
「……うーんと、俺の家は…っと…」
分かれ道を右に曲がる。
そう。
あの事故以来、記憶がすべてすっ飛んでしまったのだ。
両親の名前も、友達の名前も、あるいはもっと大切な存在も…いなかったかもしれないけど、それすらも忘れてしまったのだった。
どこの学校に通っていたのかもわからないし、本当に、いわば記憶喪失というものになっていた。
頭部を強打し、脳震盪のみで済んだ俺は本当に奇跡としか言いようがなくて。
脳出血とかだったら今頃集中治療病棟で逝ってるだろうなって。
ただ、その代償が、あまりにも…大きすぎたんだ。
だから、あの事故からの二年分の記憶しか、今の俺には存在していない。
後ろの席の吉田とも、もっと、仲良かったんだろうか。