僕は何度でも、君の名前を呼ぶよ。



炎の女は自分の胸に手を当てて少し頭を下げる。


「私の名前はフレア。よろしくね」


そう自己紹介したフレアの隣にいた水の女が一歩前に出て、俺へ手をさしのべてきた。


「そして私はネリスだよ。さ、立って!」

「!」


ネリスの手を取ると、強引に立たされる。

ネリスは優しげな笑顔を絶やさずに続けた。


「そして後ろにいたのが、セレン。いつもは貝殻の中に閉じこもってるんだけど、今日は面白そうなことがありそうだからって、出てきてたんだよね」


後ろに…『いた』…?

俺はゆっくりと振り返る。

しかしそこにいたはずのきれいな人魚は、その姿を消してしまっていた。



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