僕は何度でも、君の名前を呼ぶよ。
───…キイイ…
まもなくして二枚貝が開かれた。
中はきらびやかな宝物が散乱している。
中心のソファに優雅に腰掛ける人魚…セレン。
「やあ和玖。よく来たね」
妖艶な笑みを浮かべるセレン。
ゆったりとした動きで手招きをされ、俺は二枚貝の中へと足を踏み入れた。
「ようこそ私の家へ」
「……」
俺の様子をうかがったセレンは、すべてお見通しとでも言いたげに笑った。
「ずいぶん警戒してるね。私、そんなに怖くないよ?」
長い爪で俺の顎のラインをなぞられる。
少しの痛みと、ぞくりとした感覚があった。