僕は何度でも、君の名前を呼ぶよ。
「頭部外傷によって記憶が戻るという症例は少なくありません。不幸中の幸いでしたね」
そう言って医師は「あとは体力をつけて退院だね」と俺に声をかけて部屋を出ようとしたとき。
「本当によかった。この病院、昏睡状態の人がよくいるのよね」
ほっとした様子の看護師の、ぽろりと落とした言葉を、俺は聞き逃さなかった。
「…俺のほかに、昏睡状態の人がいるんですか?」
医師が部屋を出て行ったのを確認した看護師は、こそりと俺に耳打ちしてくる。
「個人情報だからあんまりこういうのは教えられないんだけどね…」