僕は何度でも、君の名前を呼ぶよ。
「ただいまー」
玄関で靴を脱ぎながら家の中に声を掛けると、母さん…と呼ぶべき女の人が「おかえりなさい!」とわざわざ玄関まで迎えに上がってくる。
あの事故以来、やっぱり怖いみたいで。
俺の無事を確認したいそうだ。
「…かあさん、大丈夫だから」
「ただいまー‼‼」
突然、となりで大きな声で挨拶をしたアイ。
それに対し、どきりとした俺はびくりと体を揺らしてアイの方をみる。
「? どうしたの?和玖?」
「あ、いや…なんでもない」
そうだ、アイの存在は母さんにも見えないんだ。
だってアイは、幽霊だから。
「……」
少しだけ。
ほんの少しだけ悲しそうなアイの表情が気になっただけ。
…ただそれだけだった。