最後に伝えたい
プロローグ
道路沿いに並んだ木々の影が、蜃気楼のように揺れている。
自身が飛ばされるという大層な風ではない。生温くて、肌に纏わりつく様な、夏前の逆風。こんな風を、人は何と呼ぶのだろうか。

考えた事もなかった。

「____その風はね、」

反射的に後ろを振り返る。
もう二度と聞けないというのを分かっていても、まだ離れない、優しく、悲しく、暖かいその声。



___高校三年、君と出会った夏がまたやって来る。


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