謎は流しておしまい~迷探偵とやめたい助手~(仮)
「テナント料が高いのよ」
昼休み
先輩がポツリと言う。
「調子に乗って手を広げたのが悪かった」
それは
わかるけど。
急に閉店なんて悲しすぎるよ。
どーすりゃいいの?
「すぐ失業は出ますよね」
期待を込めて
目をキラキラさせて先輩に聞くけど
「いや無理」って即答。
「だって解雇でしょう。あっち都合ですよ」
「本店があるから。形の上ではそこに全員転勤させる手続き」
本店って
車でここから
5時間かかる田舎のカフェ?
「転勤が嫌なら自主的に辞めるしかない。だからすぐ失業は出ない」
引っ越し費用もあてにできないのに、5時間かけて通勤はできない。
しかも給料低いのに。
ブラック企業。
そうやって
リストラするつもりだな。
落ち込む私に「履歴書買って帰ろう」って声をかけてくれる先輩。
先輩は来月結婚で
明るい未来が待っているけど
彼氏なし
貯金なし
遠坂 杏(とおさか あんず)26歳
どうやって
前を向けばいいのだろう。