ベターハーフ(短編集)
アンロマンチスト

【アンロマンチスト】





 仕事帰りに京平の部屋に行って、まだ帰宅しない部屋の主の帰りを待ちながら、ソファーでごろごろする。

 京平の部屋のソファーは座り心地も寝心地も良い。
 リサイクルショップで、びっくりするほど安価で買ってきたらしい。良い買い物してるね、と言ったら「あはー」と平和に笑っていた。

 そんな座り心地も寝心地も良いソファーで横になると、仕事の疲れも相まってすぐに眠ってしまうわけで。あっという間に夢の中。

 夢の中で京平はオムライスを食べていた。それはもう美味しそうに、ぱくぱくと。彼はいつも、わたしが作った料理を美味しそうに食べてくれる。それが嬉しくて、わたしは彼のためにレパートリーを増やす。
 そういえばオムライスはしばらく作っていなかった。よし、今日はオムライスに決定だ。


 そんな夢の最中、ひや、と額に冷たいものが置かれて、現実世界に帰って来た。

 目を開けると、目の前に京平。今度は本物だ。

「おはよー」

「……京平さん、これ、退けてもらっていい?」

「飲みかけだから落とさないでね」

「ふざけるな」

 わたしの額に乗せられたのは缶コーヒー。しかも京平の飲みかけらしい。今はちゃんとバランスを取れているけれど、少しでも動いたらわたしの顔とこのソファーはコーヒーまみれになってしまう。

「……京平、あんた夕飯抜きにするよ」

「あはーそれは困る」

 へらっと平和に笑った京平は素直に缶を退けて、わたしを抱き起してくれた。




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