うちの後輩ナマカワです。


恐らくレンさんと当時仲良かった父が何らかの関係はあると思うのだが、いくら聞いてもお前が適任だとレンに言われたの一点張りで、いよいよ諦めモードになりつつある

「まぁ、凛々さんのお父さんの協力もあってお店は滞りなく営業できていますし、その問題は少し置いてみてはいかがですか?」

「んー…そうだね。とりあえず、今は仕事を覚えるのが先だし」

さて、休憩終わりだと食器を持って裏口から中に入るとカランコロンとドアの鈴がタイミング良く鳴り響き、店に人が入ってきたことを知らせた

「いらっしゃいませー…ってなんだ、犬か」

「犬じゃないワン!裕翔だワン!!じゃなくて、その片付けようとしてる食器はもしかして…もうお昼食べちゃった感じっすか⁉︎あー…間に合わなかったぁ」

元気よく入ってきたのに毬絵ちゃんの言葉と空の食器を見て早々にシュンと項垂れてしまったのは午後の製造で製菓担当の丸場裕翔(まるばゆうと)君

鮮やかな金髪に耳にいくつものピアスを付け、目が痛くなるほどのド派手な服

更に手には小ぶりなジュラルミンケースを(今思えばあれはマイ調理器具セットだったが)持っていたので、私は最初新手の借金取りかと思ってしまい麺棒片手にビクビクしていた

裕翔君も最初こそ「誰この人⁉︎」と、やや吊り上がった細い目を大きく見開いて驚いていたが訳を話してみると「あー、レンさんなら仕方ないっすねぇ」なんて、あっけらかんと言われてこっちが驚いたのは記憶に新しい

人懐っこく誰にでも愛想がいいので、忙しくてレジを手伝ってくれる時はいつもより並んでくれるお客様(主に孫がいるお年寄り)が多いのだ

「冷蔵庫に余りがあるからそれ食べたら?どうせ処分するし」

毬絵ちゃんは素っ気ない返事で私のぶんの食器も抱えながら食洗機へ突っ込みボタンを押すと、再び作業を始めるべくさっさと厨房へ入っていった

それを見届けた裕翔君は思わずほぅ…と息をつく

「なんだかんだでちゃんと俺の分も用意してくれてるあのツンデレ具合がたまらなく良いっ!!」

「前向きだなぁ裕翔君って」

あはは…と乾いた笑い声をあげて、とりあえず私は冷蔵庫からラップに包まれ皿の上に乗っているサンドイッチを出してあげる

裕翔君はそれを嬉しそうに、大事そうに受け取るとやはり食べ盛りの男の子らしくペロリと平らげた


少なからず毬絵ちゃんに対して好意を抱いている裕翔君に反して彼女は割と本気で苦手としてるらしく、私が入った当初からこんな調子だった

どうしてあんなにも毛嫌いしているのか気になるがまだ新入り店長なので深くは突っ込めないでいる


< 7 / 7 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

白い雛鳥

総文字数/32,275

ファンタジー58ページ

表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop