もしも君と言葉を交わすなら【短編】
「ミア、」
彼は部屋のドアノブに手をかけると、そう私の名前を呼び振り返った。
「お前がいてよかったよ」
ーーーもしも君と言葉を交わすなら私は、
間違いなく
”大好き”
と伝えるだろうーーーー
ーーーでもね、私は君と言葉は交わせないんだ。
どんなに足掻いてももがいても、私の言葉は君には届かない。
「ニャオ」
だから私は精一杯の気持ちを込めて、できる限り高く綺麗な声で鳴いてみせる。
彼はふっと笑うとドアを開け、朝の準備へ取りかかった。
end.